これから何したらいいんやろうか
夏休み前の研究計画書の時点では、魅力的に年齢を重ねることと「遊び」の重要性について研究を進める予定だったけれど、自分自身が飽き性なのと「この研究内容ほんまにおもろいか?」と薄々思ってたのもあって、たぶんこれを卒論まで持っていったとしても自分の納得いくようなものは作れない気がした。そろそろ時間も無いから早くテーマ決めないといけないのに、やりたいことが漠然としすぎている。やばいぞ!
就活を経験して
研究については一回置いといて、この夏休みを振り返ってみると、バイト、ボイトレ、就活、マッチングアプリに打ち込んだ日々だった。特に印象的なのが就活。めんどくさそーやりたくねーなーとは思ってたけど、マジめんどくせえ。弱冠21歳にしてワタシはこんなニンゲンです!将来はコレをやりたいんです!なんて考えらんないよ〜と頭を抱えるばかりだった。そんな就活における説明会やインターンは主にzoom開催だったので、企業の人の話をフワッと聞きつつ参加者たちの様子を眺めていると、心ここに在らずの奴、メモ取ってる風の奴、「笑顔」でググって出てきた画像そのままコピペしましたみたいな顔してウンウン相槌打ちながら聞いてる奴、いろいろいて面白かった。あと、どっかの企業の若手社員が言ってたけど就活はとにかく相性なんだそう。無理して繕わずに自分らしく居れば、きっとあなたに合うところは見つかる、らしい。まず自分らしさってのが何か分からんからみんな苦労してるんだけどね!
まだまだ終わりが見えない就活を通して、自分はどういうことが好きで何がしたいのかを改めて考えられたし、論理的思考(私が全然できてないことである)の重要性ってやつを、身をもって感じることができた。今までの人生、感覚だけで生きてきたが、何をするにしても筋立っていないと説得力に欠ける。総じてめんどくさい就活だけれど、得られるものも大きかった。
これから進めていく研究にしても、今まで考えてきたテーマはどれもなんとなくの思いつきでしかなくて、自分の中にあるやりたいこと、好きなこととの繋がりが弱い。「好きこそ物の上手なれ」って言うけど、ほんとそれな、である。就活も研究も、私は好きだと思えることじゃないと上手くやれないんだろう。そんなこんなで夏休みは、自分の好きと向き合う日々だった。
デザイン思考とは
前の研究計画書で挙げたテーマは、 ① 魅力的に年齢を重ねることと「遊び」の重要性について ② 何者かになりたい私たち だったが、どちらにしても途中でフリーペーパーを制作したいということは共通していた。たぶん私はどんなことを研究するにしても何かしら作りたいんだろう。元々あることを調べたりしてまとめるよりも、自分の作り出したものから生まれる現象に興味があるのだと思う。にしても、現象を作るって何すりゃええの!?って感じだ。とりあえず「作る」というワードから連想して、「デザイン」について調べてみることにした。
石川(2019)によると、「デザイン思考は、ビジネス用語の中でもっとも『誤解』されやすい言葉」なんだそうだ。私自身、デザイン思考はクリエイティブ系の人たちに必要な考え方だと思っていたが、そういうことではないらしい。似たような意味に感じられる「アート」の特徴が「自己表現」であるのに対し、デザインの本質は「課題の発見とその解決」にある。これら二つは、似て非なる本質や役割を持つということだ。
私が研究を通して行いたいのは、アートかデザインどちらなのかというと、明確にはわからない。「作りたい!」の源泉は「人の心を動かしたい、人を喜ばせたい」という気持ちであって、アーティストになりたいのではない気がするが、なんせ超絶ナルシストの私は自己表現も大好きなのである。
テクノロジーが日に日に進化し、そのハードルが下がったこの時代では、アーティストとデザイナーの境界線というものは曖昧になってきているようだ。そのため、課題からはじまるデザイナー的な考え方に併せて、主観からはじまるアーティスト的な思考を持った表現がしたいと考えている。って言うとメッチャ意識高い感じがしてしまうけど、今こうやって研究を進めている私たちはみんなデザイナーなのである。与えられた課題ではなく自分が設定した課題に対する解決策を練り、結果として論文を創り出すデザイナーなのだ。かっこいいねウチら。
私のファンを作りたい
自分の中にある、ものを作りたい、思いを伝えたいという気持ちからなる自己表現を礎として、人に喜んでもらったり、人の抱える課題を解決したりするためには、受け手側に私や私の作るもののファンとなってもらう必要がある。所属している軽音学部でのバンド活動においても大事にしている考えだ。上手に歌を歌って褒めてもらいたいのではなく、バンドメンバー含めオーディエンス全員を楽しませてファンになってもらいたいのである。パフォーマンスで興奮させたいし、見る人の心を動かしたい。プロでも何でもない癖に本気でそう思っている。
自己表現から現象を作り出すデザイナーになるために重要となる考え方が、「ファンベース」である。佐藤(2018)は、「ファンベースとはファンを大切にし、ファンをベースにして(ベースには、土台、支持母体などの意味がある)、中長期的に売上や価値を上げていく考え方である」という定義付けに加えて、「ファンとは、『企業やブランド、商品が大切にしている〈価値〉を支持している人』」であると述べている。ファンという言葉から思い浮かぶアイドルや俳優だけでなく、企業やブランド、商品などにおける「支持者」みーんなファンってワケだ。
あらゆる物事は、ファンによって支持され、愛され、価値を上げていくもの。私たちは、たとえば行きつけの喫茶店のファンであり、目につくと買ってしまうお菓子のファンであり、あけすけに何でも話せちゃう親友のファンである。人と関わるときに私は、私自身のファンになってほしいと思うし、周囲の人たちの良いところや尊敬できるところを支持するファンでありたいと考えている。
今や馴染みのある言葉、クラウドファンディングにおいても、成功例はファンベースの考え方が活用されていると考えられる。社会現象にまでなった映画「カメラを止めるな!」は、監督・俳優・プロデューサーがプロジェクトに全力を注ぎ、当時無名であった上田慎一郎監督が自ら顔出しをして熱いメッセージを人々に伝えて目標金額を達成した。また、アイドルグループSMAPの解散報道を受けて、2016年12月にファン有志が立ち上げた「SMAP大応援プロジェクト~新聞メッセージ・どうか届きますように~」は、わずか1週間で購入型のクラウドファンディングの支援者数で日本最高記録を達成した。達成率は実に399%である。長年にわたって支持してきたファンの熱意が生んだ社会現象と言えるだろう。
若者から圧倒的な支持を受けるYouTuberやインフルエンサーたちも、佐藤(2018)の主張するファンベース施策「共感・愛着・信頼」、そしてそれらをアップグレードさせた「熱狂・無二・応援」を要として、自らの価値を高めていると考えられる。YouTubeのコメントひとつひとつに返信したり、Instagramでファンたちの質問に回答したりと、地道なファンサービスを行うことが彼らを支持するファン獲得の一端を担っている。また、テレビに出演している芸能人とファンとの関係性とは異なる「身内感」も強みだろう。ファンの言葉を傾聴し、自信を持ってもらい、共感を覚えたファンを身内として扱う。この身内感はSNSにおける企業の公式アカウントや、政治家のアカウントにおいても言えると感じた。
私は、私自身、もしくは私の作るもののファンを作ってみたいと考えている。その過程を経る中で、アーティスト的な衝動からなる、課題解決を行うためのデザイン思考を養っていきたいのだ。自己表現を通してファンを作り、人を喜ばせることが、オリジナリティのある学びに繋がるのではないかと期待している。私のしたいファン作りは、ゆりにこ(2020)が述べる「『あなた』と『ファン』が、価値観・信念・理念を共有して、つながれるようにすることがファン化です。そして、つながったご縁が長く大切に育まれていくにふさわしい自分であることがファン化です」という考え方と類似している。自己表現という行為から、私とファン、そしてファンどうしが繋がりを持てるような現象を作りたい。
具体的にやりたいことを考えてみる
先述したデザイン思考やファンベースの考え方を利用しながら、実際に私に何ができるだろうか。考えてみた案は、
① まだ見ぬファンを作るためのファンベースを考える。自分がインフルエンサーになってみる(YouTubeで動画あげてみる?)
② フリーペーパー制作から考えるファンベース ・マッチングアプリ奮闘記のフリーペーパーを作ってみる(座談会とかしたい) ・みんなの変な趣味をまとめたフリーペーパーを作る(私の場合、角栓や耳垢の除去、アリの巣にミルワームぶちこむ等の気持ち悪い動画の視聴とか) ・県大の非公式萌えキャラクターを作る(俺たちの考える最強萌えキャラ)
③ フリーペーパーじゃなくてnoteの形で発信してみる(フリーペーパーより見てくれる人が多いかも) フリーペーパーを作るとしたら、フリーペーパーについて研究しているゼミメンバーめぐの力を借りながら、今までに見たことない変なやつを作って、もっと読みたいと思ってくれるファンを作れるのか試してみたい。でも、そこから何が得られそうかの仮説立てが難しい。ただ作るだけになってしまわないか?そこから現象を作り出すなんてできるのか?
ゼミでせっかくフリーペーパーを制作したし、やっぱりかなり楽しかったので、またやってみたいとも思う。これからどうしよう〜
(6期生 きそらん)
【参考文献】 ・石川俊佑,2019,『HELLO,DEGIGN 日本人とデザイン』,幻冬社,pp.4-43 ・佐藤尚之,2018,『ファンベース』,ちくま新書,pp7-175 ・MotionGallery:Magazine,2019,『クラウドファンディングの成功例と、成功のために押さえておきたい4つのポイント』(最終閲覧日 : 2021年9月29日) https://motion-gallery.net/blog/tips_2 ・産学官連携ジャーナル,2018,『朝日新聞社 A-port 敏腕女性プロデューサーの熱い思いが社会現象をつくり出す』(最終閲覧日 : 2021年9月29日) https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/2018/06/1806-02-4_article.html ・ゆりにこ,2020,『ファンづくりをしたいと思ったらはじめに見るnote ~「なんにもない」を武器にする、SNS時代の新ルール~』(最終閲覧日 : 2021年9月30日) https://note.com/yurinico/n/nd2cbb4b19b1c